ほとんど誰も守らなかった期限
指令(EU)2023/970は、27加盟国すべてに対し、2026年6月7日までに賃金透明性を国内法へ落とし込むことを義務づけた。規定のひとつは、雇用主が応募者に賃金水準またはレンジを最初の面接より前に、通常は求人票そのもので示さねばならず、前職の賃金を尋ねてはならない、というものである。
期限内に完全実施したのは四か国のみ — スロバキア、イタリア、リトアニア、マルタ。ほかに三か国が部分実施。十か国が草案どまり、十か国は何もなし。ドイツ、スペイン、スウェーデンは最後の群に属した。オランダ、スウェーデン、チェコ、デンマークはその後、2027年1月の期日を確認している。欧州委員会は期限延長を拒み、違反手続の可能性を示唆した。
求人票が実際に書いていること
ここまでが紙の上の法である。次は市場だ。本日の集計にあるEU15都市のうち、八都市は提示賃金の中央値をまったく表示していない — ダブリン、ベルリン、ミュンヘン、リスボン、ミラノ、ストックホルム、コペンハーゲン、ブリュッセル。表示しているのは七都市。
興味深いのは、二つの一覧が重ならないことだ。ミラノは賃金を示さず、しかもイタリアは期限内に実施した四か国のひとつである。 マドリードとバルセロナは示しており、スペインは草案すら公表していなかった。 いま求人票の開示を動かしているものが何であれ、それは加盟国の法的状況ではない。法は義務を変えるが、まだ文面を変えてはいない。
| 都市 | 提示中央値 | 国内法化の状況 |
|---|---|---|
| Milan | 表示なし | 期限内に実施 |
| Dublin | 表示なし | 部分的 |
| Brussels | 表示なし | 部分的 |
| Berlin | 表示なし | 遅延・草案なし |
| Munich | 表示なし | 遅延・草案なし |
| Stockholm | 表示なし | 2027年1月へ延期 |
| Copenhagen | 表示なし | 2027年1月へ延期 |
| Lisbon | 表示なし | — |
| Madrid | EUR 28,500 | 遅延・草案なし |
| Barcelona | EUR 37,500 | 遅延・草案なし |
| Lyon | EUR 32,000 | — |
| Amsterdam | EUR 40,500 | 2027年1月へ延期 |
| Paris | EUR 50,000 | — |
| Vienna | EUR 65,000 | — |
リモートワークにも同じ沈黙
求人票が省くのは賃金だけではない。同じ3,927件のうち15%がリモート可と明記されており、この平均は二つの市場を覆い隠している。17都市がちょうどゼロ、14都市が半分以上である。
独立した読み取りも同じ方角を指す。米国のテレワークは二年間24%前後で推移する一方、求人票は出社寄りに傾き続けている。自社の従業員は別の働き方をしながら、募集は office 向けに出す、ということだ。異なる二つの計器、ひとつの結論 — 求人票は、私たちが前提しているほどには仕事を説明していない。賃金についても、場所についても。
その間に、需要はエンジニアリングへ急旋回した
マクロの背景は慎重だ。米国の雇用主は7月に44,000人を増やしたが、予想は約75,000人、6月は98,000人だった。求人は主要市場で前年比減 — 米国で約23%、フランスで25%。世界の失業率は4.9%で横ばいの見通し、ILOはより広い雇用ギャップを4億800万人と見積もる。
当社のプールは逆に動き、しかも規模より構成のほうが速く動いた。募集は3,927件へ、一日で1.6%増。だがPythonは26件から40件、TypeScriptは10件から17件へ伸び、Amazon Web ServicesとJavaScriptが上位八件に入り、PhotoshopとIllustratorは完全に外れた。採用上位五社にAnthropicとRipplingが入り、DatabricksとBlockが外れた。一枚のスナップショットに写る二速市場である — 広い慎重さと、狭く激しい需要と。
- 求人票に挙がったスキル、2026年8月6日→7日
- Leadership — 69 → 52減
- Python — 26 → 40増
- Communication — 40 → 31減
- TypeScript — 10 → 17増
- Project Management — 14 → 16増
- Amazon Web Services — 15上位八件に新登場
- Accounting — 10 → 15増
- JavaScript — 13上位八件に新登場
訂正と、その値打ち
昨日この欄は、英国の提示中央値が逆転していると報じた — ロンドンが英国三都市で最低のGBP 40,000、バーミンガムが最高のGBP 46,500と。本日、同じページはロンドンGBP 54,500、バーミンガムGBP 30,000と表示している。 所見は弱まったのではない。二十四時間で反転したのである。
説明は本稿の主題そのものだ。賃金を開示するわずかな求人から算出した中央値は、そのひと握りが入れ替わるだけで激しく動く。よって当欄は前日比の賃金比較を取りやめる。提示賃金は開示率を添えた水準として報じ、トレンドとしては扱わない。欧州十五都市のうち八都市が何も公表しないとき、誠実な見出しは数字ではなく沈黙についてのものになる。
ここにある市場数値はすべて、開けるページだ。まずは都市別の市場から、ご自身の市場を読んでほしい。
この記事で扱った市場、ライブ
過去の号
- · 7 分で読了医療・社会福祉は米国経済全体よりも多くの雇用を増やした2026年9月までの12か月間に、医療・社会福祉は米国の給与支払い名簿に52万400の雇用を加え、経済全体では49万6000の雇用が増えた。2026年10月2日に公表された米国労働統計局(Bureau of Labor Statistics、BLS)の数字による。この調査の12の部門を足すと全体になるため、ほかのすべての部門を合わせると1年間に2万4400の雇用が減ったことになる。医療・社会福祉以外の民間雇用主は19万1600増やし、政府は21万6000減らし、うち連邦政府の雇用は23万2000減った。医療だけで37万1800増え、経済全体の増加の4分の3にあたる。情報業は12万、金融業は10万7000の雇用を失った。9月単月では2万9000増え、12か月のうち4か月で雇用は減った。分析を読む
- · 8 分で読了オーストラリアの求人1件あたりの失業者は2021年より前のどの四半期よりも少ないオーストラリア統計局(ABS)の二つの調査から編集部が計算したところ、2026年8月のオーストラリアでは求人1件あたりの失業者が2.2人だった。数字のある162の四半期(1979年から2020年まで)のうち、最も低かったのは2.5で、2008年2月のことである。21の四半期が2.2を下回っているが、そのすべてが2021年5月より後だ。比率はふたたび上がっている。1年前は2.0で、そのあいだに失業者は8万人増え、求人はほとんど動かなかった。求人は32万5000件と、なお46%多い水準にある。比べているのは2019年8月で、当時の比率は3.2だった。八つの州・準州のうち七つで、比率は2019年8月より低い。クイーンズランド州は4.3から2.0になり、唯一上がったオーストラリア首都特別地域は、調査の誤差の範囲内にある。分析を読む
- · 9 分で読了ルクセンブルクの求職者が職に就いて増える分は新しい給与の1割に満たない失業給付を受けている単身者が平均賃金の3分の2の仕事に就くと、暮らし向きが良くなる分は、ルクセンブルクではその仕事の額面給与の9.35%、アイルランドでは46.24%である。Eurostatが2026年10月1日に公表した2025年の数字による。残りの90.65%と53.76%は、仕事に伴って生じる税と社会保険料、そして打ち切られる給付に消える。27の加盟国のうち10か国では80%を超え、欧州連合全体では74.5%である。これらの数字は一人の例示的な人物に税・給付モデルを当てはめたもので、調査ではない。また比較できるのは2024年からで、この年に欧州委員会の共同研究センターがOECDから計算を引き継いだ。2024年から2025年にかけて、この率が最も上がったのはイタリアで4.14ポイント、最も下がったのはスロベニアで3.09ポイントだった。分析を読む



